第1章 安心できる健やかな環境の確保

第1節 大気環境の保全

1 現状

 本県の大気環境については,環境基準が定められている物質等について常時監視を行っていますが,全般的には全国レベルより低く良好な状況です。
 しかしながら,二酸化硫黄及び浮遊粒子状物質については,平常時は低いものの季節的に桜島の火山活動による影響で環境基準を達成していない地域が見受けられます。

(1) 大気の汚染に係る環境基準
 大気の汚染に係る環境基準は,環境基本法第16条の規定に基づき,二酸化硫黄,一酸化炭素,浮遊粒子状物質,二酸化窒素,光化学オキシダント,ベンゼン,トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの8物質について人の健康を保護するうえで維持することが望ましい基準として定められており,各種大気保全対策の目標となるものです。
(表1−1,表1−2,資料編3−(1),3−(2))。

表1−1 大気の汚染に係る環境基準

環境基準の評価方法

1 短期的評価(二酸化窒素を除く。)
 測定を行った日についての1時間値の1日平均値若しくは8時間平均値又は各1時間値を環境基準と比較して評価を行う。

2 長期的評価

 ア 二酸化窒素
 1年間の測定を通じて得られた1日平均値のうち,低い方から数えて98%目に当たる値(1日平均値の年間98%値) を環境基準と比較して評価を行う。

 イ 浮遊粒子状物質,二酸化硫黄及び一酸化炭素
 1年間の測定を通じて得られた1日平均値のうち,高い方から数えて2%の範囲にある測定値を除外した後の最高値(1日平均値の年間2%除外値)を環境基準と比較して評価を行う。
 ただし,環境基準を越える日が2日以上連続した場合には非達成と評価する。

表1−2 ベンゼン,トリクロロエチレン及びテラクロロエチレンに係る環境基準


(2) 大気汚染の監視体制
 一般環境大気測定局 (以下,単に「一般局」という)19局,自動車排出ガス測定局 (以下,単に「自排局」という)2局で,環境基準が定められている物質を中心に常時監視を行っています
      (表1−3,資料編3−(3))。
 なお,川内自排局については,自動車排出ガスの影響をより適切に把握するため,川内市向田交差点から移設しました。

表1−3 県内における環境大気監視状況(平成10年3月31日)
     一般局一覧表

(3) 物質別の大気汚染の現況

[1] 二酸化硫黄
 二酸化硫黄は,主として石油などの化石燃料の燃焼に伴い発生するものです。
発生源としては,工場・事業場などが考えられますが,本県においては桜島火山ガスに含まれる二酸化硫黄も大気環境濃度に大きく影響しています。

ア 年平均値の推移
 平成10年度は,二酸化硫黄の測定を10市町20測定局で実施しました。
 鹿児島市役所,川内環境監視センター及び鹿屋市役所における年平均値の過去10年間の推移は,図1−1のとおりであり,平成5年度以降は,鹿屋を除く地点では,全国平均値と同等以下のレベルで推移しています。

図1−1 二酸化硫黄の年平均値の推移

イ 環境基準の達成状況(表1−4)
 平成10年度の長期的評価による環境基準の達成状況は,測定地点20地点のうち16地点で達成していますが,桜島火山の影響を受けて,鹿児島市有村,黒神,桜島町赤水及び鹿屋市鹿屋の4地点が達成していません。 これらの測定局における二酸化硫黄の濃度は平常値は極めて低く,高い濃度が出現しても長時間継続しないことが特徴としてあげられます。

表1−4 平成10年度二酸化硫黄濃度測定結果


[2] 二酸化窒素
 窒素酸化物は,主に各種燃料が燃焼する際,空気中の窒素と酸素が反応して生成されるほか,燃料に含まれる窒素が酸化して生成され,大気中に排出されています。
 燃焼排ガスでは,一酸化窒素がそのほとんどを占めますが,大気中で二酸化窒素に酸化されます。
 環境基準は,二酸化窒素について定められています。

ア 年平均値の推移
 (ア) 一般局
 平成10年度は,二酸化窒素の測定を8市町13測定局で実施しました。
 鹿児島市谷山支所,川内環境監視センター及び鹿屋市役所の年平均値の過去10年間の推移は,図1−2のとおりであり,全国平均に比べ低いレベルにあります。

図1−2 二酸化窒素の年平均値の推移(一般局)

(イ) 自排局
 平成10年度は,二酸化窒素の測定を2市2測定局で実施しました。
 平成10年度の鹿児島市鴨池局の年平均値は,全国平均に比べ低いレベルでした。 なお,移設される前の鹿児島市役所及び川内市向田局の年平均値の過去の推移は,図1−3のとおりであり,全国平均に比べ低いレベルで推移しています

図1−3 二酸化窒素の年平均値の推移(自排局)

イ 環境基準の達成状況
 平成10年度の一般局及び自排局について,年間にわたる1日平均値のうち,低い方から98%に相当する測定値により,二酸化窒素の環境基準との対応状況を見ますと,いずれも環境基準を下回っており,全ての地点で環境基準を達成しています。

表1−5 平成10年度二酸化窒素濃度測定結果(一般局)
表1−6 平成10年度二酸化窒素濃度測定結果(自排局)

[3] 一酸化炭素
 一酸化炭素は,不完全燃焼により発生するもので,自動車排出ガスによる影響が大きいと見られています。
自動車から排出される一酸化炭素については,国において逐次規制が強化されてきており,環境大気中の一酸化炭素濃度も全国的に減少してきています。
 平成10年度は,一酸化炭素濃度の測定を鹿児島市鴨池自排局で実施しました。

ア 年平均値の推移
 鹿児島市役所及び川内市向田自排局は,平成8年度及び9年度から鹿児島市鴨池及び川内市川内自排局に移設されましたが,過去の年平均値の推移は,図1−4のとおりであり,ほぼ横這い状態で推移しています。

図1−4 一酸化炭素の年平均値の推移

イ 環境基準の達成状況(表1−7)
 平成10年度,鹿児島市鴨池自排局においては,長期的評価について,環境基準を達成しています。

表1−7 一酸化炭素濃度測定結果(平成10年度) (単位:ppm)

市町 測定局 1時間値 1日平均値の
2%除外値
環境基準の
長期的評価
年平均値 最高値
鹿児島市 鴨池 1.0 7.3 1.7 達成
川内市 川内 0.7 3.8 1.1 達成

[4] 光化学オキシダント
 光化学オキシダントは,環境大気中の窒素酸化物と炭化水素類の混合系が太陽光の照射を受けて,オゾン(O3)を主体とする二次的に生成される物質で,その反応プロセスは極めて複雑です。
 我が国では,東京・大阪などの大都市圏で昭和45年夏以来毎夏,このような光化学オキシダントによると思われる目の刺激,のどの痛み,胸の苦しさ等を典型的な症状とする健康被害が発生していますが,本県においては,これまでこのような被害は生じていません。
 平成10年度は,光化学オキシダントの測定を6市町9測定局で実施しました(表1−8)。
 8地点で環境基準である0.06ppm を超える濃度が観測されていますが,鹿児島市役所及び谷山支所においては,各地点とも大都市の汚染地域に見られるような夏季に高くなる傾向は見受けられず,春季に高く,夏季に低くなるパターンを示していますが,その他の測定局においては,春季に加え夏季にも高くなるパターンを示しています。
 これらの原因については,これまでの国及び県の調査結果等から,成層圏内のオゾンが対流圏に降下し,地表大気に混入することによる自然現象で,大都市に見られるような光化学反応により生成された光化学オキシダントによるものではないと考えられますが,夏季に高くなるパターンについては,気象条件によるものか,人為的な汚染によるものかは不明です。
 なお,光化学オキシダントの緊急時発令基準(表1−9)である0.12ppmを超える値は出現していません。

表1−8 光化学オキシダント濃度測定結果(平成10年度)

表1−9 光化学オキシダントに係る緊急時の措置の発令条件(1)

緊急時(2) 重大緊急時(3)
1時間値が0.12ppm以上である
大気の汚染状態になった場合
1時間値が0.4ppm以上である
大気の汚染状態になった場合

(注) (1) 大気汚染防止法第23条第1項及び第4項による。
       (2) 人の健康状態又は生活環境に被害が生ずる恐れのある濃度
       (3) 人の健康状態又は生活環境に重大な被害が生ずる濃度

[5] 浮遊粒子状物質
 浮遊粒子状物質は,大気中に浮遊する粒子状物質のうち,沈降速度が遅く,大気中に比較的長期間滞留し,呼吸器への影響が懸念される粒径10μm以下のもので,昭和47年1月に環境基準が設定されました。
 平成10年度は,浮遊粒子状物質の測定を10市町21大気測定局(一般局19局,自排局2局)で実施しました。

ア 年平均値の推移
 鹿児島市役所,川内環境監視センター及び鹿屋市役所における年平均値の推移は図1−5のとおりであり,各測定局ともわずかの増減はあるものの,全般的には横ばいの状況で推移しています。

図1−5 浮遊粒子状物質濃度の年平均値の推移

イ 環境基準の達成状況(表1−10)
 平成10年度は,長期的評価について,有効測定局21局(一般環境測定局19局,自排局2局)のうち,鹿児島市有村,川内市高江,桜島町赤水及び志布志町志布志の4局で環境基準を達成していませんでした。

表1−10 平成10年度浮遊粒子状物質濃度測定結果

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