[6] 非メタン炭化水素
光化学オキシダントを生成する原因物質の1つとされている非メタン炭化水素は,有機溶剤を使用する工場,石油類のタンク類等の固定発生源から排出され,また,自動車排出ガスにも含まれているなど多種多様な発生源から排出されます。
非メタン炭化水素に係る環境基準は設定されていませんが,昭和51年光化学オキシダントの生成防止のための大気中炭化水素濃度の指針が示され,光化学オキシダント生成防止のための濃度レベルとしては,午前6時〜9時の3時間平均値が0.20〜0.31ppmCの範囲にあることとされています(表1−11)。
平成10年度の測定結果は,表1−12のとおりです。
表1−11 光化学オキシダント生成防止のための大気中非メタン炭化水素濃度レベルの指針
| 光化学オキシダントの日最高1時間値の0.06ppmに対応する午前6時から9時までの非メタン炭化水素の3時間平均値は0.20ppmCから0.31ppmCの範囲にあること。 |
[7] 大気測定車による測定結果
大気測定局を設置していない市町村等については,大気測定車による監視・測定を実施しており,平成10年度の測定結果は表1−13のとおりです。
[8] 有害大気汚染物質有害大気汚染物質については,低濃度ではあるものの多様な物質が環境大気中から検出されており,その長期曝露による健康影響が懸念されています。
このため,有害大気汚染物質による健康影響の未然防止を図ることを旨として,平成8年5月に大気汚染防止法が改正され,本県においても,物質の有害性や大気環境濃度等を考慮して健康リスクが高いと考えられる優先取組物質について,大気汚染の状況を把握するため,平成9年10月より監視測定を実施しています。
平成10年度の測定結果は,表1−14のとおりで,ベンゼンについて,自動車排出ガスの影響を受ける川内市御陵下(沿道)で環境基準値を超過したものの,テトラクロロエチレン及びトリクロロエチレンについては,環境基準値以下でした。
表1−14 平成9年度有害大気汚染物質測定結果
[9] ダイオキシン類
ダイオキシン類は,主にごみ焼却などの燃焼工程,金属精錬の燃焼工程や紙などの塩素漂白工程などから発生するとされ,その危険性が指摘されています。
廃棄物焼却炉からのダイオキシン類の排出が指摘されているため,平成9年6月の中央環境審議会答申「ダイオキシン類の排出抑制対策のあり方」を踏まえ,平成9年8月に大気汚染防止法施行令が改正され,平成9年12月1日から施行されました。
この改正により,ダイオキシン類は,排出又は飛散を早急に抑制しなければならない物質として指定されるとともに,ダイオキシン類を大気中に排出し,飛散させる施設として廃棄物焼却炉及び製鋼の用に供する電気炉が指定され,ダイオキシン類の排出の抑制に係る基準が設定されました。
これらを踏まえ,本県におきましては,平成10年度より大気中のダイオキシン類に係る監視調査や廃棄物焼却炉から排出されるダイオキシン類の監視調査を実施しており,その調査結果は,表1−15のとおりで,ダイオキシン類に係る大気環境指針及び指定物質抑制基準を下回っていました。
表1−15 ダイオキシン類大気環境モニタリング結果(平成10年度)
| 調査地点 | 年平均値 | |
| 一般環境 | 鹿屋市札元 | 0.14 |
| 国分市中央 | 0.033 | |
| 川内市若松 | 0.045 | |
| 姶良町北山 | 0.0081 | |
| 発生源周辺 | 加世田市武田 | 0.42 |
| 垂水市本城 | 0.066 | |
| 開聞町十町 | 0.13 | |
| (参考) ダイオキシン類に係る大気環境指針(平成9年9月,環境庁大気保全局長通達)は,年平均値で0.8pg-TEQ/m3と定められています。 |
[10] 石綿(アスベスト)
石綿は各種建材,自動車のブレーキ等に広く利用されており,今後とも大気環境中への放出が長期的に続くことが考えられるため,昭和63年度より継続的なモニタリングを実施しています。
平成10年度における測定結果は,表1−16のとおり問題のないレベルでした。
[11] 降下ばいじん
降下ばいじんは,大気中粒子状物質のうち,重力や雨などによって降下するばいじん,粉じんなどをいいます。
平成10年度における降下ばいじんの測定は,3市町17地点で実施しており,測定結果は,表1−17のとおりです。
鹿児島市役所,鹿屋市役所及び上屋久町消防署における年平均値の推移は,図1−6のとおりであり,桜島の火山活動の影響を受ける地域では,火山活動の状況と気象条件によって大きく変動しています。
表1-17 降下ばいじん量測定結果(平成10年度)
| 測定地点数 | 年平均値(トン/km2/月) | |||
| 最高値 | 最低値 | 全地点平均値 | ||
| 鹿児島市 | 8 | 91 | 0.4 | 13 |
| 鹿屋市 | 6 | 20 | 1.0 | 5.4 |
| 上屋久町 | 3 | 25 | 6.1 | 13 |
[12] 二酸化鉛法による硫黄酸化物濃度の測定
二酸化鉛法による硫黄酸化物濃度は,1か月の積算量(単位rSO3/100平方cm/日)であるため,溶液導電率法による測定値(単位ppm)や環境基準と単純に比較することはできませんが,地域間や長期間の汚染レベルを比較するには有効です。
平成10年度は,3市1町26地点について測定しており,その結果は,表1-18のとおりです。
[13] 酸性雨
酸性雨は,硫黄酸化物や窒素酸化物等の大気汚染物質が取り込まれ,酸性を示す雨のことで,通常,水素イオン濃度指数(pH)が5.6以下の雨をさします。
県では,酸性雨の実態を把握するため,昭和63年度から喜入町で,平成元年度から鹿児島市で自動測定機によるモニタリングを実施しています。
平成10年度の測定結果は,表1−19のとおりであり,環境庁の第3次酸性雨対策調査結果(平成5年度〜平成9年度:全国の年平均値
pH4.8〜4.9)と比べると全国平均よりやや低いレベルでした。
表1-19 平成10年度酸性雨の測定結果
| 鹿児島市 | 年月 | 平成10年 | 平成11年 | ||||||||||
| 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 1 | 2 | 3 | ||
| 降雨数 | 10 | 9 | 8 | 10 | 11 | 11 | 6 | 6 | 3 | 4 | 6 | 15 | |
| pHの平均値 | 4.4 | 4.9 | 4.5 | 4.6 | 4.5 | 4.2 | 4.5 | 4.6 | 4.4 | 4.5 | 4.5 | 4.5 | |
| 喜入町 | 年月 | 平成10年 | 平成11年 | ||||||||||
| 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 1 | 2 | 3 | ||
| 降雨数 | 7 | 16 | 10 | 6 | 9 | 12 | 9 | 6 | 3 | 4 | 8 | 14 | |
| pHの平均値 | 4.6 | 4.8 | 4.8 | 4.6 | 4.7 | 4.7 | 5.2 | 4.5 | 3.9 | 4.4 | 4.3 | 4.4 | |
大気汚染を防止するためには,大気汚染の状況を的確に把握することや監視体制を充実するとともに,発生源であるばい煙発生施設及び粉じん発生施設等の規制を強化することが必要です。
そのため,県では関係法令や県公害防止条例に基づき,排出基準の監視等の立入検査の実施や施設の改善指導を行っています。
(1) 法令に基づくばい煙等の規制
工場及び事業場の事業活動に伴って発生する大気汚染物質等(ばい煙,粉じん)に
ついては,大気汚染防止法により排出規制等を行っています。
ばい煙発生施設に係る規制としては,硫黄酸化物,ばいじん,有害物質(塩化水素,窒素酸化物等)の物質ごとに排出基準が定められており,この排出基準に違反した事業者(ばい煙排出者)に対しては,改善命令等の措置を講じることができるようになっています。
そのほか,ばい煙発生施設の設置又は構造等の変更に際しては,知事への事前届出及びこれに対する知事の計画変更命令等の措置が講じられるようになっています(資料編3−(4),(5),(6),(7))。
また,堆積場,ベルトコンベア,破砕機等を一般粉じん発生施設として定め,これらの施設について,粉じん飛散防止のための施設の構造,使用及び管理の基準を設けています。
県においては,ボイラー,アスファルトプラント(乾燥炉)及び廃棄物焼却炉等のばい煙発生施設のほか,砕石場等の一般粉じん発生施設に対して立入検査を実施し,施設の改善等を指導するとともに,ばい煙発生施設については,ばい煙の濃度の測定,使用燃料の抜き取り検査を行っています。
また,大気汚染防止法に基づくばい煙量等の自主測定義務を励行させ,事業者自らもその結果を認識し,大気汚染の未然防止に努めるよう指導を行っています。
平成10年度は,ばい煙・一般粉じん発生施設192施設について立入検査を行いました。一方,県公害防止条例では,大気汚染防止法の規制対象外である小規模ボイラーや堆積場(500平方メートル以上1,000平方メートル未満)等を特定施設として設定し,立入検査を行って大気汚染防止法と同様の規制を行い,大気保全対策の強化を図っています。
なお,本県における規制対象施設の届出状況は,表1−20及び表1−21のとおりです。
表1-20 大気汚染防止法に基づく施設の届出数(平成11年3月31日現在)
表1-21 県公害防止条例に基づく施設の届出状況(平成11年3月31日現在)
(2) 自動車排出ガスの規制
内燃機関における石油系燃料の燃焼に伴い発生する自動車排出ガスは,その主成分の一酸化炭素及び窒素酸化物等によって道路沿線の生活環境を悪化させています。
自動車排出ガス対策は,昭和41年からガソリン車に対する規制に始まり,逐次強化され,昭和56年8月の環境庁告示(通称「58年度規制」という。)により,全ての自動車について許容限度が設定されました。
また,環境庁ではより一層の規制強化に向けて,「中央公害対策審議会平成元年答申」
を受け,ディーゼル自動車等の排出ガスの窒素酸化物及び粒子状物質の許容限度の改正を行い,平成3年から平成11年にかけて規制強化が行われています。
さらに,「中央環境審議会平成8年答申」においては,自動車排出ガスに係る有害大気汚染物質対策のあり方,「同平成9年答申」においては,ガソリン・
LPG自動車の排出ガス等の低減対策のあり方について示されたところであり,今後環境庁では,これに沿って排出ガスの許容限度の改正を行い,平成12年以降,段階的に規制強化を行うこととしています。
これらの自動車排出ガスの規制は,一酸化炭素,炭化水素類のアイドリング時の濃度,あるいは走行モードにおける排出量等について許容濃度が定められ,これを基にした道路運送車両法に基づく検査で排出ガスの測定が実施されています。
なお,本県においても,自動車保有台数が年々増加しているため,今後とも自排局において常時監視を継続していきます。
(3) 監視の強化
[1] 環境の監視
大気汚染を防止するためには,発生源の規制と並んで大気汚染の状況を的確に把握し,効果的に対策を行うことが必要です。
本県においては,昭和41年11月に川内市で降下ばいじんの測定を開始して以来,ばい煙の排出量が多く大気汚染が懸念される地域について,関係市町の協力を得ながら,大気汚染常時監視測定網の整備を図ってきています。
このほか,事業者の設置している自動測定局が川内市に4局,上屋久町に1局の合計5局あります。
また,大気測定局を設置していない市町村については,大気測定車による監視測定を実施しています。
なお,大気測定車の積載機器は,表1−22のとおりです。
表1-22 大気測定車の積載機器
| 大気測定車の積載機器 | |
| 硫黄酸化物自動測定装置 | 風向風速測定装置 |
| 窒素酸化物自動測定装置 | 非メタン炭化水素測定装置 |
| 浮遊粒子状物質自動測定装置 | オゾン測定装置 |
| 一酸化炭素自動測定装置 | 気象観測装置 |
| オキシダント自動測定装置 | 酸性雨測定装置 |
[2] テレメーターシステムによる常時監視
川内地区については,大規模発電所やパルプ工場などが立地していることから,この地区の大気汚染の状況を的確に把握し,迅速かつ適切な対策を講じて大気汚染を未然に防止するため,各測定局と川内環境監視センターとを結ぶテレメーターシステムによる環境監視を行っており,大気汚染が予想される場合には,事業場に対し操業の制限など適切な措置を要請することにしています(表1−23)。
表1-23 川内地区環境大気保全措置実施要綱に定める硫黄酸化物排出量削減要請基準
また,桜島の火山活動に伴う火山ガス等が環境大気に及ぼす影響を常時監視するため,桜島島内の桜島町役場局,赤水局,有村局,黒神局をテレメーター化し,環境センター及び
鹿児島市役所で監視を行っています。
さらに,平成4年度には,環境センターのテレメーターシステムのデータ処理系を更新し,県下全ての大気測定局のデータを集中監視するなど大気監視業務の一元化を図りました。
[3] 発生源の監視
大気汚染を未然に防止するためには,発生源に対する監視が重要です。
本県においては,大気汚染防止法に基づくばい煙発生施設について,ばいじん,硫黄酸化物,窒素酸化物及び塩化水素等の排出基準監視を実施しています。
平成10年度は,15工場について測定を実施しました(表1−24)。
表1-24 排出基準監視測定(平成10年度)
| 項目 | 施設の種類 | 測定施設数 |
| ばいじん | ボイラー・廃棄物焼却炉・電気炉・溶解炉 | 14 |
| 窒素酸化物 | 溶解炉・ボイラー・廃棄物焼却炉 | 4 |
| 塩化水素 | 廃棄物焼却炉 | 13 |