第1章 安心できる健やかな環境の確保
第2節 水・土壌環境の保全
(1) 水質汚濁に係る環境保全目標
ア 環境基準
水質汚濁に係る環境基準は,環境基本法第16条の規定により,水質の汚濁に係る環境上の基準として定められていますが,これらの環境基準は,公共用水域の水質汚濁防止のために各般にわたり講ぜられる共通の行政目標であって,各種の水質保全対策は,この環境基準の達成維持を主たる目標として推進されています。
(ア) 人の健康の保護に関する環境基準
健康保護の観点から全国の全ての公共用水域について一律に適用されるものであり,5年度から9項目が23項目に増加しましたが,その項目(健康項目)は,カドミウム,全シアン,鉛,六価クロム,ひ素,総水銀,アルキル水銀,PCB,
ジクロロメタン,四塩化炭素,1,2−ジクロロエタン,1,1−ジクロロエチレン,シス−1,2−ジクロロエチレン,1,1,1−トリクロロエタン,1,1,2−トリクロロエタン,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン,1,3−ジクロロプロペン,チウラム,シマジン(CAT),チオベンカルブ(ベンチオカーブ),ベンゼン及びセレンです(資料編4−(1)−[1])。
(イ) 生活環境の保全に関する環境基準
複数の類型の中から地域の実情等を勘案して望ましい類型を指定することになっており,その項目(生活環境項目)は,「BOD等に係る環境基準」として,水素イオン濃度(pH),生物化学的酸素要求量(BOD;河川に適用)または化学的酸素要求量(COD;湖沼,海域に適用),溶存酸素量(DO),大腸菌群数,浮遊物質量(SS;河川,湖沼に適用),ノルマルヘキサン抽出物質(油分等;海域に適用)が定められており(表1−24),また,湖沼・内湾等の閉鎖性水域における富栄養化に伴う水質の悪化や利水障害に対処するため「湖沼の全窒素及び全りんに係る環境基準」及び「海域の全窒素及び全りんに係る環境基準」(表1−25)が設定されています。
表1-24 BOD等に係る環境基準(BOD,CODのみ抜粋)
| 類型 | 河川(BOD) | 湖沼(COD) | 海域(COD) |
| AA | 1mg/リットル以下 | 1mg/リットル以下 | - |
| A | 2mg/リットル以下 | 3mg/リットル以下 | 2mg/リットル以下 |
| B | 3mg/リットル以下 | 5mg/リットル以下 | 3mg/リットル以下 |
| C | 5mg/リットル以下 | 8mg/リットル以下 | 8mg/リットル以下 |
| D | 8mg/リットル以下 | - | - |
| E | 10mg/リットル以下 | - | - |
表1-25 湖沼・海域の全窒素及び全りんに係る環境基準
| 湖沼 | 海域 | |||
| 類型 | 全窒素 | 全りん | 全窒素 | 全りん |
| 1 | 0.1mg/リットル以下 | 0.005mg/リットル以下 | 0.2mg/リットル以下 | 0.02mg/リットル以下 |
| 2 | 0.2mg/リットル以下 | 0.01mg/リットル以下 | 0.3mg/リットル以下 | 0.03mg/リットル以下 |
| 3 | 0.4mg/リットル以下 | 0.03mg/リットル以下 | 0.6mg/リットル以下 | 0.05mg/リットル以下 |
| 4 | 0.6mg/リットル以下 | 0.05mg/リットル以下 | 1mg/リットル以下 | 0.09mg/リットル以下 |
| 5 | 1mg/リットル以下 | 0.1mg/リットル以下 | - | - |
イ 類型指定状況
水質汚濁に係る環境基準のうち,生活環境の保全に関する環境基準については,国もしくは都道府県知事が各水域ごとに類型を指定することとされています。
本県においては,BOD等に係る環境基準について,これまで37河川(48水域),4湖沼(4水域),8海域(24水域)の類型指定を行っています。
また,湖沼の全窒素及び全りんに係る環境基準については,池田湖(60.
6. 7,II類型),鶴田ダム(61. 12. 10,IV類型),鰻池(62.
6. 10,II類型),及び高隈ダム貯水池(9. 6. 25,III類型)について類型指定を行っています。なお4湖沼とも全窒素については当分の間適用しないこととしています。
一方海域の全窒素及び全りんに係る環境基準については,鹿児島湾について,類型指定を行っています。(8.6.5,II類型)
(2) 公共用水域の水質現況
県では,水質汚濁防止法第15条の規定により,県内の公共用水域の水質常時監視調査を毎年実施していますが,平成10年度の調査概要は以下のとおりです。
1 水質調査実施状況
(1) 調査対象
[1] 環境基準類型指定水域
37河川48水域,4湖沼4水域,8海域24水域 計76水域
[2] その他
17河川17水域 1湖沼1水域
(2) 調査回数 1水域あたり年2〜24回
(3) 調査機関 鹿児島県,鹿児島市,
建設省
2 調査結果の概況
(1) 健康項目
人の健康の保護に関する環境基準項目について,136地点で調査した結果,天降川水系中津川犬飼橋地点において,砒素が年平均で0.011mg/Lと環境基準値(0.01mg/L)を上回っていましたが,そのほかは全てが環境基準に適合していました。(表1−26参照)
(2) 生活環境項目
環境基準の類型指定を行っている76水域の環境基準達成率は,90.8%(69水域/76水域)であり,平成8年度の90.7%(68水域/75水域)とほぼ同水準でした。(表1-27,
28,図1−1参照)
表1-27 生活環境の保全に関する環境基準の達成状況(BOD または COD 75%値)
表1-28
環境基準(河川BOD,海域,湖沼 COD)達成率の推移
(3) 類型指定水域の水質状況
ア 河 川
(ア) 調査対象水域及び調査回数,37河川48水域,年3〜24回
(イ) 健康項目については,68調査地点のうち,天降川水系中津川犬飼橋地点において砒素が環境基準値を上回りました。
この地点では,以前から,環境基準を超える値が検出されており,平成8年度に,環境基準超過の背景について水質等の詳細調査を実施した結果,環境基準超過の原因は,上流域の霧島火山群に起因していると考えられます。
(ウ) 生活環境項目(BOD75%値)の環境基準の達成率は,93.8%(45水域/48水域)であり,平成9年度と同じでした。
平成9年度との比較
・達成から未達成となった水域……田原川
・未達成から達成となった水域……五反田川下流
・連続して未達成の水域……………稲荷川上流・菱田川
(表1−29, 30, 33−(1)参照)
表1−29 環境基準達成河川のうち特に水質良好な河川(BOD75%値)
(単位:mg/リットル)
| 水域名 | 基準点 | 類型 | BOD |
| 本城川上流 | 内之野橋下流(垂水市) | AA(1.0) | 0.5未満 |
| 万之瀬川上流 | 両添橋(川辺町) | A(2.0) | 0.5未満 |
| 花渡川上流 | 上水道取水口(枕崎市) | A(2.0) | 0.5未満 |
| 中津川 | 犬飼橋(牧園町) | A(2.0) | 0.5未満 |
| 溝之口川上流 | 中谷橋(財部町) | A(2.0) | 0.5未満 |
表1−30 環境基準未達成河川(BOD75%値)
(単位:mg/リットル)
| 水域名 | 基準点 | 類型 | BOD |
| 田原川 | 河口から300m上流(大崎町) | C(5.0) | 6.0 |
| 稲荷川上流 | 水車入口橋(鹿児島市 | A(2.0) | 3.2 |
| 菱田川 | 菱田橋(有明町) | A(2.0) | 2.3 |
イ 湖 沼
(ア) 調査対象水域及び調査回数
4湖沼4水域 年6〜12回
(イ) CODに係る環境基準については,4湖沼(池田湖,鶴田ダム貯水池,鰻池,高隈ダム貯水池)ともA類型(3mg/L以下)を達成していました。
また,富栄養化の代表的な指標である全りん(T-P)について,池田湖,鰻池がII類型の環境基準を,高隈ダム貯水池がIII類型の環境基準値を達成していましたが,鶴田ダム貯水池はIV類型の環境基準値を未達成でした。
(表1−31, 32, 33−(2)参照)
表1−31 CODの環境基準達成状況
(単位:mg/リットル)
| 水域名 | 地点数 | 類型 | 基準値 | 75%値 | 環境基準 達成状況 |
| 池田湖 | 3 | A | 3.0 | 1.8〜2.0 | ○ |
| 鶴田ダム貯水池 | 3 | A | 3.0 | 2.3〜2.9 | ○ |
| 鰻池 | 1 | A | 3.0 | 2.3 | ○ |
| 高隈ダム貯水池 | 2 | A | 3.0 | 1.7〜2.4 | ○ |
※全層(日間平均値)の75%値で評価。
表1−32 T-Pの環境基準達成状況
(単位:mg/リットル)
| 水域名 | 地点数 | 類型 | 基準値 | 平均値 | 環境基準 達成状況 |
| 池田湖 | 3 | 2 | 0.01 | 0.005〜0.006 | ○ |
| 鶴田ダム貯水池 | 3 | 4 | 0.05 | 0.043〜0.056 | × |
| 鰻池 | 1 | 2 | 0.01 | 0.005 | ○ |
| 高隈ダム貯水池 | 2 | 3 | 0.03 | 0.013〜0.014 | ○ |
※0.5m層の年間平均値で評価。
表1−33(1) 県内公共用水域に係わる環境基準の類型指定状況及び平成10年度達成状況(河川)
ウ 海 域
(ア) 調査対象水域及び調査回数
8海域24水域 年2〜6回
(イ) CODに係る環境基準の達成率は,83.3%(20水域/24水域)であり,平成8年度の91.7%を下回りました。
(表1−33(3)参照)
水域別には,薩摩半島南部海域,鹿児島湾(1)(6),大隅半島東部海域(3)の肝属川河口海域が環境基準未達成となりました。
平成9年度との比較
・達成から未達成となった水域…鹿児島湾(1)(6),薩摩半島南部海域
・未達成から達成となった水域…八代海南部海域(2)(3)
・連続して未達成となった水域…大隅半島東部海域(3)
※ 注)( )の数字は水域名です。
(ウ) 鹿児島湾海域については,全窒素,全りんともにII類型の環境基準を達成していました。(表1−34参照)
表1−34
| 海域名 | 範囲 | 基準点 | 当該 類型 |
類型指定 年月日 |
全窒素 | 達成 状況 |
| 全りん | ||||||
| 鹿児島湾海域(1) | 全域 | 26点 | 2 | 平成8.6.5 | 0.19 | ○ |
| 0.024 | ○ |
図1−1 平成10年度県内公共用水域環境基準達成状況(河川・湖沼・海域)
図1-2
県内主要河川の水質の経年変化(BOD 75%値)
その1(A類型河川) その2(B類型河川) その3(C類型河川)
図1-3
県内主要湖沼の水質の経年変化
その1(COD75%値) その2(全窒素) その3(全りん)
図1-4
県内主要海域の水質の経年変化(COD 75%値)
鹿児島湾(1) 八代海南部海域(3) 大隅半島東部海域(4) 薩摩半島南部海域
名瀬港海域(2) 薩摩半島西部海域(3) 西之表港海域 奄美大島本島海域
(4) 地下水の水質現況
県では,水質汚濁防止法第15条の規定により,県内の地下水の水質常時監視調査を毎年実施していますが,平成10年度の調査概要は以下のとおりです。
ア 水質調査実施状況
(ア) 調査対象市町
工場・事業場の立地状況や地下水の利用の状況等を勘案し,年次計画的に地域を選定して実施しています。
平成10年度は,下記の13市36町2村で調査を実施しました。
鹿児島市,川内市,鹿屋市,串木野市,阿久根市,名瀬市,出水市,大口市,指宿市,加世田市,国分市,西之表市,垂水市,吉田町,桜島町,頴娃町,大浦町,知覧町,川辺町,伊集院町,日吉町,金峰町,樋脇町,入来町,東郷町,宮之城町,薩摩町,里村,上甑村,野田町,高尾野町,長島町,菱刈町,姶良町,蒲生町,横川町,栗野町,牧園町,隼人町,財部町,末吉町,内之浦町,高山町,大根占町,根占町,龍郷町,笠利町,徳之島町,天城町,和泊町
(イ) 調査の区分
a 概況調査
地域の全体的な地下水の水質の概況を把握するために実施する地下水の水質調査。
b 汚染井戸周辺地区調査
概況調査等により,新たに発見された汚染について、
その汚染範囲を確認するために実施する地下水の水質調査。
c 定期モニタリング調査
汚染井戸周辺地区調査等により確認された汚染の継続的な監視等,経年的なモニタリングとして定期的に実施する地下水の水質調査。
(ウ) 測定項目
a 環境基準項目(20項目)
カドミウム,鉛,六価クロム,砒素,総水銀,ジクロロメタン,四塩化炭素,1,2−ジクロロエタン,1,1−ジクロロエチレン,シス−1,2−ジクロロエチレン,1,1,1−トリクロロエタン,1,1,2−トリクロロエタン,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン,1,3−ジクロロプロペン,チウラム,シマジン,チオベンカルブ,セレン,ベンゼン
b 要監視項目(2項目)
硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素,フッ素
イ 調査結果の概要
(ア) 環境基準項目
44市町村(13市29町2村)の258井戸について調査した結果,12市町(5市7町)の40井戸で,砒素,トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンが「地下水の水質汚濁に係る環境基準値」を超過しました。
このうち,鹿児島市の1井戸及び鹿屋市の1井戸は,新たにそれぞれ汚染井戸周辺地区調査及び概況調査を実施した結果,環境基準超過が確認されたものです。
その他の井戸は,全て過去に検出された井戸であり,モニタリングの観点から経年的に調査を実施しているものです。これら環境基準を超過している井戸については,飲用についての指導を行うなどしています。(表1−36参照)
表1−36 平成10年度環境基準項目測定結果(環境基準値超過井戸)
(イ) 要監視項目
硝酸性窒素等については,平成5年3月に要監視項目として指針値が示された25項目の中の項目であり(平成11年2月:地下水の水質汚濁に係る環境基準に移行),水道法に基づく水道水質基準の基準項目であることや,農畜産業が盛んである本県の実情等を勘案して,平成7年度から,県下全域を対象として重点的・計画的に常時監視を実施しています。
平成10年度は,16市町(1市15町)の171井戸について調査した結果,8市町(1市7町)の12井戸で,硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素が,環境庁が示した指針値を超過していました。
これら指針値超過井戸については,飲用等についての指導を行いました(表1−37参照)。
表1−37 平成10年度要監視項目測定結果(指針値超過井戸)
(5) 海水浴場調査
県内の主要な海水浴場について,毎年その水質等の現状を把握し,必要に応じて所要の措置を講ずるとともに,結果を公表して県民の利用に資することとしています。
10年度は,図1−5の21海水浴場について(うち,磯海水浴場は鹿児島市が実施),シーズン前及びシーズン中の2回の水質検査を実施しました。
調査結果は,表1−40に示しました。
[参考] 判定等について
平成10年3月11日付け環水管第85号「水浴に供される公共用水域の水質等の実態調査について」(環境庁水質保全局長通知)の中で,別添資料として示されたものです。
1 判定については,下記の表に基づいて以下のとおりとします。
(1) ふん便性大腸菌群数,油膜の有無,COD又は透明度のいずれかの項目が「不適」であるものを,「不適」な水浴場とします。
(2) 「不適」でない水浴場について,ふん便性大腸菌群数,油膜の有無,COD及び透明度によって,「水質AA」,「水質A」,「水質B」あるいは「水質C」を判定し,「水質AA」及び「水質A」であるものを「適」,「水質B」及び「水質C」であるものを「可」とします。
・各項目の全てが「水質AA」である水浴場を「水質AA」(水質が特に良好な水浴場)とします。
・各項目の全てが「水質A」である水浴場を「水質A」(水質が良好な水浴場)とします。
・各項目の全てが「水質B」である水浴場を「水質B」とします。
・これら以外のものを「水質C」とします。
2 「改善対策を要するもの」については以下のとおりとします。
(1) 「水質B」と判定されたもののうち,ふん便性大腸菌群数が,400個/100mLを超える測定値が1以上あるもの。
(2) 油膜が認められたもの。
(6) 休廃止鉱山周辺環境調査
鉱山周辺におけるひ素等による環境汚染状況を把握し,環境汚染による被害の未然防止に資するため,県では47年度から継続して休廃止鉱山周辺の河川調査等を実施しています。
平成10年度は,金峰町の金峰山鉱山,阿部かすみ鉱山及び桜山鉱山について調査を実施しました。
その結果,カドミウムが阿部かすみ鉱山のNo 1,No 3で0.001r/L,鉛が全調査地点で0.001〜0.005r/L,ひ素が金峰山鉱山,阿部かすみ鉱山及び桜山鉱山のNo
1,No 3で0.001〜0.005r/Lそれぞれ検出されましたが,いずれの地点でも環境基準値を満足していました。
なお,調査結果は表1−41, 42,調査鉱山の位置は図1−6に示すとおりです。
表1-41 休廃止鉱山水質調査結果
表1-42 休廃止鉱山底質調査結果
(7) 土壌汚染
土壌汚染については,法体系が未整備であり,また,土壌汚染は,地下水汚染と密接な関係があることから,地下水等の現状把握と併せて情報の収集に努めています。