2 水・土壌関係の保全
2 対 策
(1) 公共用水域及び地下水の常時監視
県では,水質汚濁防止法第15条の規定により,県内の公共用水域及び地下水の水質汚濁の状況を常時監視しています。
水質測定は,法第16条の規定により知事が作成した測定計画に基づき,県,国,及び鹿児島市等が,環境基準項目を中心に要監視項目や栄養塩類など水域特性等を勘案した項目について,毎年計画的に幅広く水質状況を監視測定しています。
平成11年度の公共用水域及び地下水の測定計画は表1−43,
44のとおりです。
ウ 特定事業場の排出水監視
排出基準適用事業場からの排出水については,工場立入り調査等の実施により,法に基づく排水基準の遵守状況の監視を行っています。
10年度は,法に基づく特定事業場のうち585事業場について立入り調査を実施し,うち534事業場につき延836回の水質調査を行っています。
その状況は表1−47のとおりです。
エ 排水基準違反に対する行政措置
法に基づく特定事業場の立入り調査の結果に基づき,特定施設の改善命令2件,改善勧告54件,文書指導58件の行政措置を行いました。
行政措置を行った業種別数は表1−48のとおりです。
なお,これらの事業場は,期限内にそれぞれ処理施設,処理方法の改善等必要な措置を講じています。
オ 水質汚濁に係る主要業種排水対策
(ア) でん粉製造業
でん粉工場からの排水は,例年10月初旬から翌年4月までの間排出されますが,排水としては,原料甘藷の流水輸送工程及び洗浄機から出るフリューム排水,原料磨砕後の分別工程から出るノズルセパレート排水,粕脱水排水,生粉溜排水及びでん粉精製排水などがあります。
でん粉製造工場は季節操業であり,その排水量も多く,また有機質も多量に含むこと等から,その排水処理については技術的にも難しい面をもっています。
現在,県内には工組系23工場,農協系16工場の計39工場が操業を行っていますが,でん粉工場からの排水対策として,県農政部では,表面バッキ式と嫌気処理を組み合わせた排水処理を指導推進しています。
排水処理技術については,農業試験場及び工業技術センター等の指導により研修会の開催並びに現地指導等を実施し,処理技術の習得を図るほか,排出水の日常管理対策として「県でん粉排水分析施設利用管理組合」が,県内6カ所の農業改良普及所に設置したでん粉排水分析施設により自主的に排水分析を行い,適正な排水管理に努めるなど「でん粉工場排水処理に係る環境保全対策指導要領」に基づき環境保全に努力がなされています。
でん粉工場からの排出水の規制は,水質汚濁防止法が施行された当初(昭和46年6月),全国一律の排水基準より緩い暫定排水基準が適用されていましたが,昭和56年6月から現在の一般排水基準に移行しており,平成10年度の排水監視の調査結果は,表1−49のとおりです。
排水基準の遵守率は,一部の工場においては,依然として排水処理が不十分な状況もみられるなど環境汚染防止に対する取り組みや排水処理施設の維持管理等について問題点も残されているため,今後とも関係機関と連携しながら排水監視の強化・指導に努めることとしています。(図1−7)
(イ) 畜産業
畜産業に起因する環境汚染防止については,水質汚濁防止法により一定規模以上の豚房,牛房及び馬房施設からの排出水について排水基準が適用されており,県では,早朝・夜間立入等を含め,監視の強化に努めていますが,依然として維持管理の不徹底やふん尿等を未処理に近い状態で放流するなど悪質なものも見受けられ,法の規定に照らして改善命令の発動等厳しく対処してきています。
県農政部においては,畜産経営の健全な発展を図る上で環境問題への取組が更に大きな課題となってきていることから,平成7年3月に従来の「畜産経営による環境汚染防止指導要領」にかわる「鹿児島県環境保全型畜産確立基本方針」及び「畜産環境保全対策指導指針」を策定し,地域社会と調和した畜産経営の安定的発展に資することとしています。
具体的な指導については,家畜保健衛生所毎に「畜産経営環境保全推進指導協議会」を県下9カ所に設置して,家畜保健衛生所による巡回指導等を実施するほか,「畜産環境保全対策指導指針」に基づき,県,家畜保健衛生所毎,市町村にそれぞれ環境保全型畜産推進協議会を設置して,環境汚染防止に対する総合的な指導を行っています。
また,庁内組織として7課5試験場で構成する「家畜ふん尿・でん粉工場排水対策連絡会議(昭和59年設置)」を定期的に開催し,関係機関が連携を密にして家畜ふん尿に係る環境保全対策の推進に努めています。
(3) 小規模事業場等排水対策
公共用水域の水質汚濁の原因としては,大規模な工場・事業場からの排水のほかに,近年は生活排水や,事業場数が多い小規模事業場からの排水の寄与が相対的に大きくなってきています。
しかしながら,排水の実態等が十分把握されておらず,指導体制も整備されていないことから,県では,公共用水域の水質保全を一層推進するため,平成4年度に小規模特定事業場(水質汚濁防止法に基づく排水基準の適用されない特定事業場)について実態調査を実施し,平成5年度に小規模特定事業場排水対策指導指針を策定しました。
さらに,非特定事業場(法及び条例の適用を受けない事業場)についても指導体制を整備するため平成6年度から7年度にかけて事業場排出水の水質実態調査等を実施し,これらの結果を踏まえて,既存の指導指針と併合した「鹿児島県小規模事業場等排水対策指導指針」を策定しました。
同指針では,県,市町村及び事業者の役割を示しており,市町村及び関係機関等と連携しながら,業者の水質保全意識の高揚並び排水処理対策の推進を図ることとしています。
C 計画の期間
平成3年度から平成12年度までとします。
D 水質保全目標及び許容汚濁負荷量
| 水質保全目標 | 許容汚濁負荷量 | |
| COD(化学的酸素要求量) T−N(全窒素) T−P(全りん) |
3mg/l以下 0.2mg/l以下 0.01mg/l以下 |
419kg/日 135kg/日 18.8kg/日 |
E 流入汚濁負荷量及び削減すべき汚濁負荷量
ア COD(化学的酸素要求量)
南薩畑地かんがい事業の池田湖からの取水による流出負荷量の増加,及び池田湖北西地域に特定環境保全公共下水道(処理された後池田湖外(湊川)へ排出される)が整備されると生活排水や工場排水の負荷量の減少が見込まれます。
イ T-N(全窒素)
特定環境保全公共下水道が整備されると,生活排水や工場排水の負荷量は減少が見込まれますが,南薩畑地かんがい事業に係る池田湖への導水(池田湖水位維持分を含む)による負荷量の増加が見込まれます。
ウ T-P(全りん)
CODと同様の理由から,負荷量の減少が見込まれます。
F 環境保全対策の展開
ア 導水に係る汚濁負荷量の削減対策
池田湖への導水にあたり,窒素濃度の低い河川からの導水を優先するほか,南薩畑かん推進水質保全協議会などの活動により,農家に対し適正施肥等の指導を行うなど,池田湖へ流入する窒素の量を抑制します。
イ 汚濁発生源対策
・水産養殖対策……適正な養殖規模の検討,給餌法の改善等
・工場・事業場排水対策……一層の負荷削減の検討と特定環境保全公共下水道の整備促進
・生活排水対策……住民の意識啓発と特定環境保全公共下水道の整備促進
・農畜産業対策……施肥量,施肥時期,施肥技術など施肥の適正化,家畜ふん尿の堆肥化等による適正な土地還元
ウ 普及啓発
地域住民に対し水質保全に関する意識啓発に努めます。
エ 環境利用対策
池田湖の水質保全及び自然環境保全を基本とした総合的かつ計画的な土地利用を図るべきであり,自然地の改変を最小限に留めるとともに,排出される汚濁物質を可能な限り系外排出することや保水能力の高い森林を確保することなどが必要です。
また,土地利用にあたっては事前に水質環境への影響を調査,評価させるとともに必要な保全対策を講じさせる必要があります。
G 計画の推進体制
効果的な推進については,県,関係市町をはじめ池田湖域の事業者や住民が一体となって積極的な努力を重ねることが重要です。
このため,庁内における関係部課の相互の連携を図るとともに,県と関係市町からなる「池田湖水質環境保全対策協議会」の積極的な運営を図るものとします。
(イ) 第2期鹿児島湾水質環境管理計画の基礎調査によると,湾奥部(IVゾーン)の排出汚濁負荷量に占める生活系の割合は,34.5%でもっとも高い。
(ウ) 湾奥部全体として,人口動態をみると増加傾向である。
(エ) 湾奥部を含む鹿児島湾流域の市町は,鹿児島湾水質環境管理計画の推進のため,鹿児島湾環境行政連絡会議を組織し,生活排水対策を含む各種水質保全対策を進めている。
オ 現在の対応
生活排水対策重点地域に指定された市町は,生活排水対策推進計画に基づき,合併処理浄化槽等の生活排水処理施設の整備やパンフレットの配布等による住民への啓蒙活動などの各種生活排水対策を推進しています。
図1-15 鹿児島湾奥部流域生活排水対策重点地域(第3期鹿児島湾ブルー計画 計画区域)
A 下水道の整備
ア 下水道の概要
下水道は,市街地における雨水の排除や家庭,工場等から排出される汚水を排除し,処理するための施設であり,河川,湖沼,海域等公共用水域の水質保全と快適な生活環境の確保のため,不可欠な根幹的施設となっています。
イ 事業の現況
(ア) 公共下水道
公共下水道は,主として市街地における下水を排除し,又は処理するために地方公共団体が管理する下水道で,終末処理場を有するものであり,かつ汚水を排除すべき排水施設の相当部分が暗渠である構造のものをいいます。
本県の公共下水道事業は,平成10年度末現在,鹿児島市,枕崎市,名瀬市,指宿市,出水市,鹿屋市,串木野市,川内市,伊集院町,高尾野町,牧園町,和泊町,知名町,知覧町,大崎町,笠利町,末吉町,上甑村,国分・隼人公共下水道組合の8市9町1村1組合で整備が進められており,この中で鹿児島市,枕崎市,名瀬市,指宿市,出水市,鹿屋市,串木野市,国分市,隼人町,伊集院町及び牧園町及び和泊町の8市4町が処理を開始しています。
10年度末における県全体の普及率(人口)は32%であり,全国平均の56%(9年度末)に比べ,下回っており,今後とも引き続き整備促進に努める必要があります。
(イ) 都市下水路
都市下水路は,公共下水道認可区域外の主として市街地における雨水排除を目的とした下水道施設です。
本県では,10年度までに9市13町47か所(延長56q)を計画決定しており,そのうち延長約44qが整備済みとなっています。
平成10年度現在,3市1町4か所において整備中であり,今後とも引き続き整備促進に努める必要があります。
(ウ) 流域別下水道整備総合計画
下水道では,環境基本法に基づく水質環境基準が定められた公共用水域について,当該水質環境基準を達成維持するため,各流域ごとに下水道整備に関する総合的な基本計画として,流域別下水道整備総合計画を都道府県が策定することとなっています。
本計画は,該当流域における下水道計画の基本方針を明らかにし,下水道計画区域や根幹的施設の配置,能力及び事業の実施順位等を定めるもので,個々の下水道計画の上位計画として位置づけられ,今後事業を進める上での基本計画となるものです。
本県では,50年度から計画策定のための調査を実施し,59年度に鹿児島湾奥,平成10年度に八代海の計画について建設大臣承認を得ており,川内川,志布志港については,現在策定中です。
(エ) 鹿児島県下水道等整備構想
市街地,農山漁村等を含めた県全域における下水道処理施設の計画的,効率的な整備のための構想を市町村が作成する原案をもとに調整し,取りまとめ,今後下水道事業の長期的な指針となるものです。
B その他の生活排水処理施設の整備
ア 地域し尿処理施設(コミュニティプラント)
計画処理人口が101人以上3万人未満の水洗便所のし尿と生活排水を併せて処理する施設の整備事業で,平成10年度末現在加治木町(加治木団地),鹿島村,川内市(永利ホープタウン)で共用されています。
イ 農業集落排水施設
農村集落からの生活排水等による農業用用排水の水質汚濁防止,農業用用排水施設の機能維持,農村の生活環境の改善を目的としています。
本県では平成10年度末現在,名瀬市,川辺町,大浦町,入来町,祁答院町,宮之城町,野田町,東町,菱刈町,輝北町,松山町,有明町,佐多町,宇検村,与論町の1市13町1村の20地区で供用されており,川内市,名瀬市,川辺町,大浦町,吹上町,入来町,祁答院町,宮之城町,高尾野町,野田町,東町,菱刈町,姶良町,輝北町,松山町,有明町,田代町,佐多町,屋久町,宇検村,瀬戸内町,笠利町,喜界町,和泊町,知名町,与論町の2市23町1村の40地区で整備が進められています。
ウ 漁業集落排水施設
漁港及び周辺水域の浄化を図るとともに漁村集落における居住環境の整備を目的としています。
本県では平成10年度末現在,漁港漁村総合整備事業により,方野浦漁港(下甑村),名音漁港(大和村),平田漁港(宇検村)の3村,また漁港集落環境整備事業により戸崎漁港(市来町),野間池漁港(笠沙町),境漁港(垂水市),坊泊漁港(坊津町)弊串漁港(東町),汐見漁港(長島町)の1市5町で整備が進められており,この中で,汐見漁港と坊泊漁港で一部処理を開始しています。
C 合併処理浄化槽の整備
(ア) 設置状況
し尿の処理のみで処理能力の低い単独処理浄化槽に対し,合併処理浄化槽については,し尿と併せて生活雑排水を処理できることから,下水道や農業集落排水処理施設などと並ぶ有効な生活排水処理施設として位置づけられています。
しかし,単独処理浄化槽より設置費用が高い,敷地を要するなどの理由により普及が進まないため,国や県では,合併処理浄化槽の設置者に対し助成を行っている市町村に対する補助事業を平成元年度から開始した結果,この数年急速に合併処理浄化槽の新設率が高くなってきています。
これまでの設置基数は表1−53のとおりです。
(イ) 補助事業による整備状況
下水道と同等以上の処理性能(放流水質: BOD20r/L以下)を有する小型合併処理浄化槽の普及促進を図るため,国庫補助事業の合併処理浄化槽設置整備事業が昭和62年度に創設され,また,県費補助事業のブルーリバー推進事業を平成元年度に創設しています。
この事業によるこれまでの整備基数は表1−54のとおりです。
(6) 土壌汚染対策
良好な土壌環境を保全するため,土壌の汚染に係る環境基準を達成維持し,工場・事業場における有害物質の適正管理や肥料・農薬の適正使用を促進するとともに,必要な場合は農用地の土壌の汚染防止等に関する法律に基づく措置を講じます。
化学物質等土壌環境を汚染するおそれのある物質を扱う工場・事業場等においては,立て替えや移転等の機会を捉えて,土壌汚染の実態調査を行うよう指導します。