1 水域における化学物質に関する環境調査
(1) 概要
化学物質には,様々な用途に有用性をもち,現代社会のあらゆる面で利用されており,人類の生活の向上に多大の寄与をしています。その反面,化学物質の中には,その製造,流通,使用,廃棄等の様々な過程で環境中に放出され,環境中での残留,食物連鎖による生物濃縮を通じて,人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすものがあります。
国においては,平成5年11月に制定した「環境基本法」に基づいて平成6年12月に制定された「環境基本計画」の中で,化学物質の環境リスク(環境保全上の支障を生じさせる恐れ)対策が,環境保全に関する基本的な事項の一つとして明確に位置づけられたところであり,環境リスクをできるだけ定量的に評価するとともに,環境リスクを総体として低減させることを目指し,各般の施策を実施することとしています。
化学物質で環境を悪化させてしまった場合,その回復は膨大な労力,金額をかけても容易ではないばかりか,時として,取り返しのつかない結果ともなりえます。したがって,環境媒体として化学物質に暴露することにより,健康に悪影響を受けることを未然に防止するため,化学物質の環境中の残留レベルを監視し,必要な場合に対策を講じていくことが必要不可欠であり,環境問題に対処していく上で重要なことです。この観点のもとに本県では,昭和59年度から環境庁の委託を受け,第二次総点検調査の一環として化学物質に関する調査(水系)を実施しています。
(2) 平成10年度環境庁委託調査
ア 化学物質環境調査(水系)
化学物質の環境安全確認の第一段として,環境中での残留性について,水質,底質,生物における濃度レベルを調査するものです。
本県では,フェニルスズ化合物,アニリン,O-クロロアニリンなどの6物質を,天降川河口の水質及び底質について調査を行いました。
イ 水質・底質モニタリング
人の健康や生態系に対して影響を及ぼすと考えられる化学物質による水質及び底質の環境汚染を,経年的に監視することを目的としています。
本県では,HCB,ディルドリン,クロルデン類などの20物質を,五反田川の水質及び底質について調査を行いました。
ウ 生物モニタリング
化学物質による生物の汚染を系統的にかつ定期的に測定することにより,人の健康や生態系に対して問題があると考えられる物質の環境中での挙動や,汚染レベルの推移の把握等を行い,化学物質による環境汚染を経年的に監視することを目的とします。
本県では,PCB,DDT,クロルデン類などの18物質を,薩摩半島西岸のスズキについて調査を行いました。
エ 指定化学物質等検討調査(水系)
昭和61年5月に改正された「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」では,指定化学物質は,環境中の残留状況によって有害性調査の指示がなされ,その結果により有害性が認められれば,第二種特定化学物質に指定され,製造・輸入予定数量の事前届出のほか,必要に応じ,製造・輸入量の制限等が行われます。
本調査は,指定化学物質等の一般環境中での残留状況を把握するため,水質及び底質における濃度レベルを調査するものです。
本県では,1,4-ジオキシサン,4,4'-ジアミノジフェニルエタン,トリブチルスズ化合物,トリフェニルスズ化合物の4物質を,五反田川河口において調査を行いました。
2 ゴルフ場使用農薬環境汚染対策
(1) 概要
本県においては,11年3月現在,既設のゴルフ場が,32カ所,造成中のゴルフ場が2カ所あり,これらのゴルフ場の管理にあたっては,良質な芝を維持するため農薬が使用されています。
このため,国においては,農薬取締法に基づく指導強化を進めるとともに,平成2年5月,21種類の農薬(殺菌剤8種類,殺虫剤6種類,除草剤7種類)について,環境庁からは,水質汚濁の防止に係る暫定指導指針が,また,厚生省からは,水道水の暫定水質目標が示されました。
対象とした21種類の農薬は,ゴルフ場で使用されたものの中から全国的にみて主要なものを選定しており,指針値については,現在得られている知見等をもとに,人に対する安全性を考慮して設定されたものです。
なお,平成3年7月には,9種類(殺菌剤4種類,殺虫剤1種類,除草剤4種類),さらに,平成9年4月には,5種類(殺菌剤1種類,殺虫剤1種類,除草剤3種類)が新たに追加されました。
本県においては,農政部が策定した指導指針の内容を踏まえ平成元年10月1日から農政部・保健環境部(当時)が中心となり「鹿児島県ゴルフ場農薬安全使用指導要綱」に基づき,農薬による被害の防止及び周辺環境の保全のため,ゴルフ場事業者に対する指導の強化を図っています。
この要綱の主要な内容は,次のとおりです。
[1] 農薬安全管理体制の指導(農政部で指導)
[2] 農薬の適正使用の指導(農政部で指導)
[3] 農薬の使用状況調査(農政部で指導)
[4] 異常時の措置(農政部,環境生活部,保健福祉部で指導)
[5] 事業者による水質検査指導(農政部,環境生活部で指導)
なお,平成2年12月に設定した,県環境影響評価要綱の運用においても,ゴルフ場の建設にあたって,農薬を予測,評価を行わせる項目として揚げさせ,その流出による環境影響の予測評価を行わせる等の指導を行っています。
(2) 水質保全対策
ゴルフ場周辺の水質保全のため,[1]県ゴルフ場農薬安全使用指導要綱に基づいて,ゴルフ場事業者自ら実施する排水口等水質(農薬)調査,[2]厚生省の水道水暫定水質目標に基づいて,水道事業者が実施する水質調査,[3]環境庁暫定指導指針に基づいて県が実施する排水口等水質調査や,県の行政検査として実施するゴルフ場周辺の飲用井戸の水質調査が実施されています。
このうち,県が9年度に実施した水質調査結果の概要は以下のとおりです。
ア 排水口等水質調査結果県下の既設の全ゴルフ場32カ所及び造成中ゴルフ場2カ所,計34ゴルフ場の排水について調査を実施しました。調査結果は,表1-57に示すとおりです。
ゴルフ場で使用される農薬は,一部のゴルフ場から微量検出されたものの,環境庁が示した「ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁防止に係る暫定指導指針値」を全て下回っていました。
3 焼却施設のダイオキシン対策
焼却施設から排出されるダイオキシン類を削減するため,廃棄物処理法施行令及び施行規則が平成9年6月に改正(平成9年12月1日施行)され,許可対象施設の範囲が拡大されるとともに,構造基準及び維持管理基準等が強化されました。
県では,市町村等の焼却施設に対する監督指導の強化を図るとともに,産廃焼却施設の監視指導を強め,ダイオキシン類の一層の削減に努めます。
(1) 設置許可が必要な焼却施設の範囲の拡大
焼却施設の設置許可の対象範囲については,従来の原則として1日当たり処理能力5t以上の施設から,1時間当たりの処理能力が200kg以上又は火格子面積が2u以上の施設に引き下げられ,範囲が拡大しました。
既存の施設で新たに許可の対象範囲に入ってきたものについては,許可要件とされる構造基準,維持管理基準に適合するよう,施設設置者に対して施設の改善を指導しているところです。
(2) 焼却施設の構造基準及び維持管理基準の強化
焼却施設からのダイオキシンの量を減らすため,設置許可施設の構造基準及び維持管理基準が改正されました。なお,既存の焼却施設については,この基準の適用について,1年,5年の経過措置があります。
県は,施設設置者に対し,研修会,広報媒体等を通じて法令改正の内容の周知徹底を図ってきました。
(3) ダイオキシン濃度の規制
維持管理基準においては,新設,既設の別,焼却炉の処理能力の規模に応じて,排気ガス中のダイオキシン濃度の基準が設けられました。
既存の焼却施設については,基準の適用を1年猶予後,平成14年11月までは1立方メートル当たり80ナノグラム,同年12月以降は施設の規模に応じて1から10ナノグラム以下にすることが定められています。
平成10年度においては,全ての施設が基準値の80ナノグラム以内でした。
県としては,今後とも施設設置者に対して,維持管理基準に基づき適正な管理を行うとともに構造基準に適合するための改造工事等を行い,定められた基準濃度以下になるよう指導していきます。
(4) 焼却の処理基準等
従来から廃棄物処理法では野焼きは禁止されていますが,今回,施行規則で焼却施設の設備の構造について基準を設けるとともに,厚生省告示で燃焼方法について基準を示しました。
この基準は,施設の規模の大小に関わらず適用されるもので,一般家庭の焼却炉においても廃棄物を焼却する際は,この基準を遵守しなければなりません。
焼却炉のダイオキシン発生原因として,塩化ビニールを含むプラスチック類の焼却が挙げられることから,ごみの分別を徹底し,これらは小型焼却炉では焼却しないことが大切です。
(5) 一般廃棄物広域化計画
国では,今後新設される市町村等の焼却施設について,ダイオキシン類の発生を抑制するため,24時間連続運転する全連続型で,原則として1日100t以上を処理する焼却施設を国庫補助の対象としている(離島を除く。)ことから,県は,ダイオキシン類の排出削減,ごみの排出抑制及びリサイクルの推進を基本方針として,平成11年3月に平成20年度までを計画期間とする「県ごみ処理広域化計画」を策定しました。
この計画は県内を市郡単位を基本として11のブロックに地域割りし,ブロックごとに整備する焼却施設・リサイクル施設・管理型最終処分場等の規模・整備年度等を定めたもので,県としては,今後,この計画に基づき市町村等の広域的な施設整備を促進することとしています。
4 内分泌攪乱化学物質等について
(1)内分泌化学物質
ア 内分泌攪乱化学物質とは
「外因性内分泌攪乱物質(環境ホルモン)」とは,「動物の生体内に取り込まれた場合に,本来,その生体内で営まれる正常なホルモン作用に影響を与える外因性の物質」を意味します。
近年,専門家より環境中に存在するいくつかの化学物質が,動物の体内のホルモン作用を攪乱することを通じて,生殖機能を阻害したり,悪性腫瘍を引き起こすなどの悪影響を及ぼしている可能性が指摘されており,環境保全行政上の新たで重要な課題の一つとなっています。
イ 内分泌攪乱作用を有すると疑われている物質
環境庁は,67物質を示しています。主な物質は,次のとおりです。
(ア) 産業化学物質
アルキルフェノール類(合成洗剤の原料),ビスフェノールA(樹脂の原料),フタル酸化合物(プラスチック可塑剤),有機スズ(船底塗料),ベンゾフェノン(医薬品原料)など
(イ) ダイオキシン類
(ウ) 農薬
DDT(殺虫剤),シマジン(除草剤),マンネブ(殺菌剤)など
ウ 県の取り組み
内分泌攪乱化学物質は,人の健康や環境への影響など,未解明な部分が多く,また,多岐な分野にわたることから,庁内及び教育庁の関係各課(17課)で構成する「内分泌攪乱化学物質等情報交換検討会」を設置し,情報の交換等に努めています。
今後も,この情報交換検討会を適宜開催し,相互の連携を図りながら,情報の収集や適切な対応に努めることとしています。
(2)ダイオキシン
ア ダイオキシンとは
有機塩素化合物であるポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)とポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)の総称で,物質の製造,廃棄等の人為的過程や環境中での反応等の自然的過程を経て,非意図的に生成される物質です。
化学構造の違いによって210種類の異性体があり,そのうち,2・3・7・8四塩化ジベンゾ・ダイオキシン(2・3・7・8-TCDD)は,強い発ガン性,催奇形性を持ち,ベトナム戦争に使われた枯れ葉剤に含まれていたことから国際的な問題になり,また国内では,昭和58年,ゴミ焼却場のゴミの中から検出されたという報告を契機に社会的注目を集めました。
イ 県の取り組み
ダイオキシン類による大気の汚染状況の監視調査等を実施し,ダイオキシン対策の推進に努めているところです。
また,内分泌攪乱化学物質の場合と同様「内分泌攪乱化学物質等情報交換検討会」において,庁内関係各課が連携・協力して情報交換等を行っています。