第1節 地域特性に応じた自然環境の保全
本県は,九州の最南端に位置し,南北約600q,総面積9,166.58キロ平方メートルの県土を有し,海抜1,900m前後の高い山や温帯から 亜熱帯に至る広い地域に200あまりの島々を含む南北に著しく長い地形を示し,わが国で初めて世界遺産に登録さ
れた屋久島,霊峰と湖の霧島,今も噴煙をあげ活発な活動を繰り返す桜島,サンゴ礁で知られる奄美の島々など多彩で豊かな自然環境に恵まれています。
将来とも県民が健康で文化的な生活を営むために,この多様で良好な自然環境を体系的に保全する施策を展開し,豊かな郷土の環境づくりを進めなければなりません。
このため,本県では,この良好な自然環境や自然景観を有する地区を自然環境保全地域や自然公園に指定し,保護・管理を行っています。
また,一定規模以上の開発行為についても,自然保護の観点から指導を行うほか,各種行事を企画して自然保護思想の普及・啓発を行っています。
1 自然環境保全地域
(1) 自然環境保全地域の指定状況
自然環境保全地域には,自然環境が原生の状態を維持している地域として国が指定した「原生自然環境保全地域」,自然的・社会的諸条件からみても自然環境を保全することが必要な区域として国が指定した「自然環境保全地域」,さらに自然環境保全地域に準ずる地域として,県が指定した「県自然環境保全地域」があります。
本県には,屋久島原生自然環境保全地域をはじめ,4箇所の自然環境保全地域があり,その面積は1,825haです。(表2-1,図2-1)
(2) 自然環境保全地域の保護・管理
それぞれの地域が持つすぐれた自然環境を維持するため,地域ごとに管理・施設整備の基本となる保全計画が策定されています。
保全計画では,地域の自然環境を保持する必要性によって,原生自然環境保全地域については「立入制限地区」と「その他の地区」に,自然環境保全地域については,「特別地区」「海中特別地区」「野生生物保護地区」「普通地区」に区分し,それぞれの地区に応じて行為を規制し,一定の行為を行おうとする場合は,環境庁長官又は知事の許可・届出が必要です。
なお,本県では,表2-1のとおり,地域を区分しています。
(2) 自然公園の保護・管理
〔1〕 自然公園の公園計画の見直し
現在指定されている自然公園のうち,指定後相当の年数を経たものについては,自然状態の変化や公園利用の需要増大,国民の自然に対する認識の高まり等の諸情勢の変化に伴い,現在の自然公園の公園計画(公園の保護及び利用のための規制又は施設に関する計画)では対応できない面もでてきています。
このため,公園計画の見直し作業を行っており,本県では,霧島屋久国立公園霧島地域・錦江湾地域,雲仙天草国立公園天草地域及び吹上浜県立自然公園について公園計画の見直しを終えています。
〔2〕 自然公園における行為規制
それぞれの自然公園が持つすぐれた風景地を保護し,公園としての資質を恒久的に維持し,適切な利用に供するため,自然公園ごとに管理,運営,施設整備の基本となる公園計画(保護計画・利用計画)が策定されています。
保護計画では,広域にわたる自然公園の区域を景観の優秀性や自然公園を保持する必要性の度合い又は利用上の重要性によって,それぞれの地域を区分して,「特別保護地区」,「海中公園地区」(以上2地区は国立・国定公園に限る),「特別地域」,「普通地域」の4種に分け,それぞれの地区・地域に応じて行為を規制しています。
一定の行為を行う場合は,環境庁長官又は知事の許可又は届出が必要です。
また,道路・園地・宿舎などの自然公園の利用施設の整備に関わる利用計画も自然公園の適正な利用増進を図る一方,無秩序な利用施設による乱開発を防止するための規制措置としての役目も果しています。
なお,自然公園内の各種行為に対する許可・届出の処理件数は,表2-3のとおりです。
〔3〕 保護管理事業
(ア) 国立公園の美化清掃
自然公園の主要な利用地域においては,多数の利用者がもたらす空き缶等のごみの収集と処理が地域の地理的特性等から困難な場合が多く,ごみの散乱により,美観が害されるのみならず,悪臭など利用者に不快の念をもたらす原因となりました。
このため,国立公園内の特に利用者の多い地域については,美化清掃団体を組織・育成し,利用者に対する「ごみ持ち帰り運動」等の普及啓発を行うとともに,国(環境庁),県及び地元市町の助成による美化清掃活動を表2-4のとおり実施しています。
(イ) 海中公園地区のオニヒトデ等駆除
海中公園地区の主要な景観となっているサンゴ礁にオニヒトデが異常発生し,多大な悪影響を及ぼしたことから,国(環境庁)の補助を受け,奄美群島国定公園海中公園地区及びその周辺海域のオニヒトデ等駆除事業を実施し,貴重な海中景観資源であるサンゴ礁の保護に努めています。
また,平成3年度のオニヒトデ駆除実施にあたり,シロレイシガイダマシ類(サンゴ食貝)の被害が報告され,平成4年度よりオニヒトデ駆除に併せて駆除を実施しています。
これまでの駆除実績については,表2-5のとおりです。
(3) 自然公園の利用
〔1〕 自然公園の利用実態
自然公園は,人々が自然との交流を図る健全な野外レクリエーションの場として活発に利用されています。
なお,10年度の利用者数は,表2-6のとおりです。
〔2〕 自然公園の施設整備
自然公園の主要な利用地域においては,利用の過度の集中などにより,かけがえのない自然環境が損なわれる恐れがあります。
これらの状況に対応するため,自然公園の適正な利用の誘導が図られるよう,公園利用施設の整備を進めています。また,自然公園の主要な景観地・利用地域に指導標識等を設置し,自然公園利用者の意識高揚を図っています。
なお,10年度においては,表2-7のとおり,自然歩道,休憩所等の公園利用施設の整備を行いました。
また,自然公園指導標識等の設置状況は,表2-8のとおりです。
〔3〕 公園事業の許可(承認)
自然公園の利用計画に基づく利用施設の設置にあたっては,公園事業として,環境庁長官又は県知事の認可(事業者が地方公共団体の場合は承認)が必要です。
自然公園における公園事業の認可(承認)の処理件数は,表2-9のとおりです。
3 世界自然遺産
(1) 地域の指定状況
世界遺産条約は,世界の文化遺産及び自然遺産を保護するため,保護を図るべき遺産を登録するとともに,締約国の拠出金からなる世界遺産基金により,各国(特に途上国)が行う保護対策を援助することを目的としており,日本には自然遺産2地域,文化遺産7地域の世界遺産が登録(平成10年12月現在)されています。
本県には,我が国第1号の自然遺産登録地域として,屋久島地域があります。
(2) 地域の概要
〔1〕 登録年月日 平成5(1993)年12月11日
〔2〕 登録面積 10,747ha
〔3〕 登録理由
屋久島は中央部に九州の最高峰宮之浦岳(1,935m)をはじめとする高峯がそびえる山岳島であり,世界的な動植物の移行帯に位置する湿潤気候下の高山として生物地理的に特異な環境下にあり,かつ年間4,000mm〜10,000mmの多雨に恵まれていること等から,樹齢数千年のヤクスギをはじめとして極めて特殊な森林植生を有しています。
海岸付近のガジュマル,アコウ等の亜熱帯植物から,タブ,シイ,カシ等の暖帯,モミ,ヤマグルマ等の湿帯,更にヤクザサ,シャクナゲ等の亜高山帯に及ぶ植生の垂直分布が顕著にみられ,また多くの固有植物,北限・南限植物が自生していること等,特異な生態系を構成しています。
特に,本地域の傑出した自然の特徴として,樹齢数千年に及ぶ直径3〜5mにも達するヤクスギがあげられ,老齢の巨樹林は,生態的にも,かつ形態的にも世界的に貴重な天然林と考えられています。
さらに,当地域には,アカヒゲ,アカコッコ等の絶滅の恐れのある動植物が生息,自生しています。
(3) 地域の保護・管理
世界遺産地域を適正かつ円滑に管理することを目的として,原生自然環境保全地域,国立公園等各種地域指定制度の運用及び各種事業の推進等の基本となる「屋久島世界遺産地域管理計画」が策定されています。
また,遺産地域の管理を効果的に実施するため,地元関係行政機関の連絡調整の場として「屋久島世界遺産地域連絡会議」が設置されています。
管理計画では,遺産地域が世界遺産としての価値を損なうことのないよう,将来にわたって厳正な保護を図ることを基本として,〔1〕工作物の新築,土石の採取等の厳正な規制,〔2〕特定地点への利用の集中を防止するための措置の実施,〔3〕優れた自然の体験,観察,学習等の適正な利用の促進などの方針に沿って対処することとしています。
なお,環境庁では,世界遺産地域の調査・研究,環境教育を柱とした普及啓発及び国立公園の管理運営のため,平成8年4月13日「屋久島世界遺産センター」を開館しました。
(4) 世界自然遺産会議の開催決定
世界遺産条約に登録された屋久島を有する本県において,世界自然遺産を有する国内外の自治体等が一同に会する場を提供し,世界自然遺産の保全と世界自然遺産を生かした地域振興の在り方について論議を深めるとともに,県民参加による豊かな自然を生かした循環と共生の地域づくりを促進するため,平成12年5月,「世界自然遺産会議」を開催します。
この会議では,併せて屋久島をはじめ本県の優れた自然などを世界に紹介し,アジア太平洋地域を中心とした国々との国際交流を推進することとしています。
〔1〕 会 議 名 称 「世界自然遺産会議」
〔2〕 テ ー マ 自然にやさしく
自然とともに
そして自然を未来の子供たちへ
〔3〕 開 催 場 所 屋久島・鹿児島市(屋久町体育館,県文化センター外)
〔4〕 開 催 時 期 平成12年5月18日 (木)〜21日(日)
〔5〕 主
催 世界自然遺産会議実行委員会
〔6〕 参加予定者 ・世界自然遺産を有するアジア・太平洋地域の自治体
(日本を含む14カ国 19自治体)
・国際機関,関係省庁,県内外自治体,各種団体等
・その他一般参加者(参加自由)
4 自然環境の管理体制
自然環境保全地域及び自然公園の規制指導を適正に実施するため,次のような指導監視体制で臨んでいます。
(1) 国,県,市町村関係
環境庁九州地区国立公園・野生生物事務所,環境庁国立公園管理官事務所(えびの,天草,屋久島),県環境保護課,県観光課,県大島支庁,県土木事務所,各市町村自然保護担当課
(2) 県非常勤職員
自然保護監視員
(桜島,指宿,佐多,長島,瀬戸内,与論駐在監視員 各1名,屋久島駐在監視員2名,合計8名)
(3) ボランティア等
県自然保護推進員(69名),環境庁自然公園指導員(60名),霧島連山自然保護協議会等
5 開発行為の指導・助言
自然環境保全地域,自然公園,鳥獣保護区などの自然環境保全地域を各地に設定し,これらの地域の適切な管理に努めていますが,その他の地域においても,県自然環境保全条例第24条に基づき,一定規模以上の開発行為(内容)について,自然保護の面から指導を行い,自然環境の保全を図っています。
10年度は,6件の届出を受理しました。
6 自然保護思想の普及啓発
(1) 自然保護月間における啓発活動の推進
自然環境の保全の実効を上げるためには,県民の自然環境保全に対する正しい理解と認識を深め,自然保護思想の普及高揚を図ることが必要です。
このため,本県では,昭和48年度から毎年8月を「自然保護月間」とし,自然保護に関する諸行事を実施し,啓発活動の推進を図っています。
10年度における実施状況の概要は,次のとおりです。
〔1〕 自然保護月間の趣旨の周知徹底
市町村,各学校等関係機関に対し自然保護月間の周知徹底を行い,月間にちなむ諸行事の実施促進を図りました。
〔2〕 自然保護月間作品コンクール
月間に先だち県内の小・中・高校生から「自然保護」をテーマにしたポスター・作文・標語を募集し,入賞作品を表彰するとともに,7月21日から8月31日までの42日間(株)鹿児島三越において,8月19日から9月15日までの28日間屋久島環境文化村センターにおいて,入賞作品展を開催しました。
また,ポスター,入賞作品集を印刷し,県,市町村,学校等関係機関に配布しました。
作品の応募状況は,表2-10のとおりです。
(2) 自然環境保全行政担当者研修会
県関係機関,市町村,県自然保護推進委員を対象に,平成11年
2月22日 (月)に研修会を開催し,76名が参加しました。
「屋久島自然体験セミナー」に県自然保護監視員3名が参加し,環境学習の体験実習を実施しました。
また,県関係機関,市町村,県自然保護推進員を対象に,平成11年2月3日(火)に研修会を開催し,64名が参加しました。
7 身近な自然の保全
(1) 森林の保全
〔1〕 現状
森林は,木材等の林産物を生産するだけでなく,水資源のかん養や山地災害の防止,大気の浄化,保健休養の場の提供など公益的機能を有し,環境材として県民生活に深く結びついています。
しかしながら,近年,県内の森林は林業経営環境の悪化や過疎化・高齢化等により,管理が十分でない森林が増加しつつあり,環境材としての価値が低下しつつあります。
このように自然環境としても重要な森林の有する多様な機能を高度に発揮させ,安全で潤いのある県土の形成に資するため,森林の適正管理に努めるとともに,県民が森林整備に参加しやすい体制を整備するなどして,「循環の森林」,「保全の森林」,「共生の森林」の類型区分に応じた恵み豊かな森林づくりを進める必要があります。
〔2〕 対策
(ア) 環境の森林の整備
管理が十分でない森林について,公有化を推進し,計画的な森林の整備・管理を行うとともに,自然環境や公益的機能に配慮した複層林施業や長伐期施業等を推進します。
また,公有化森林については,その特徴を活かし,森林ボランティア活動を活用した県民参加型の森林づくりを推進します。
(イ) その他の森林
ア 保安林の充実
県民の生活環境や産業生活活動の推進を保全するため,特に重要な役割を果している森林については,水源かん養保安林等,保安林の指定を行っています。
本県においては,第5期保安林整備計画(平成6年度〜平成15年度)に基づき,重要な水源林や山地災害危険地区を中心に平成10年度末で民有林の12.0%,52,030haを保安林に指定しています。
イ 保安林の整備
水源地域における水資源の確保や,自然災害等によって機能が低下した保安林については,その機能の早期回復を図るため,治山事業を積極的に導入しています。
(2) 赤土等流出防止対策
奄美地域における土砂流出防止対策は,大島支庁土砂流出防止対策推進協議会において,「大島支庁土砂流出防止対策方針」に基づき県の実施する公共工事における沈砂地の設置,植生・竹細工などによる法面保護等の流出防止対策を講じるとともに,関係団体への土砂流出防止対策の指導,新聞広報やパンフレットによる啓発,合同パトロールの実施など,土砂流出防止対策の推進に努めています。
また,平成10年度は,「土砂流出防止対策会議」において,
(3) 廃油ボール漂着による海岸汚染
平成11年 2月 7日〜13日にかけて,奄美大島北部を中心に沖永良部までの1市5町2村において廃油ボールの漂着が確認されました。漁業等により約1200名による除去作業が実施されました。
また,平成11年 3月25日〜 4月20日にかけて種子島を中心に,屋久島,薩摩半島南部(頴娃町)の1市4町で廃油ボールの漂着が確認されました。漁業等により
3月30日〜 4月21日に約900名による除去作業が実施されました。
なお,原因者については,第十管区海上保安本部が調査を行いましたが,いずれも不明でした。