本県は,多様な気候と地理的な特性を背景に豊かな自然が育まれ,多種多様な野生生物が分布しており,植物は約3,100種類,鳥類は約350種類,哺乳類は約50種類が生息しています。
特に,奄美地域は,アマミノクロウサギやルリカケスなどの固有種が多く生息しており,生物多様性保全の視点から世界的にも重要な地域です。
また,県内には希少な野生生物種が多く生息していますが,「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」で国内希少野生動植物種として指定されたり,天然記念物に指定されて保護されています。
このうちツルは国際希少野生動植物種と国の特別天然記念物に指定され,毎年約10,000羽が出水平野で越冬しますが,ネグラの設置や給餌などツル保護のための諸施策を講じています。
ウミガメは春から夏にかけて延べ3,000頭余(日本一)が産卵のため県内各地の海岸に上陸しますが,ウミガメ保護のための監視活動や保護思想の普及啓発等を行っています。
また,野生鳥獣の保護を図るため県内に137箇所,面積71,798haの鳥獣保護区を設定しています。
1 鳥獣保護
(1) 管理体制
鳥獣行政を円滑かつ適正に実施するため,鳥獣の保護及び狩猟の取り締りについて適正な指導監督をする鳥獣保護員を,県下に113人設置しています。
また,国設鳥獣保護区には,4名の保護管理員を設置してその管理運営を行っています。
(2) 鳥獣保護区の設定状況
近年,自然保護思想の高まりとともに,野生鳥獣の保護も,自然保護の一環としてその重要性が一段と認識されるようになってきました。
これは各種の開発によって,私たちの周辺から野生鳥獣が姿を消しつつあることが,広く県民の関心の的になってきたことによるものと考えられます。
このような背景のもとに鳥獣保護対策の強化を図るため,平成9年3月に策定された第8次鳥獣保護事業計画に基づく施策を実施するとともに,関係機関との密接な連携を保ちつつ鳥獣保護行政の推進に努めてきました。
平成10年度に設定等を行った鳥獣保護区は表2-13のとおりです。
なお,平成11年3月31日現在の設定状況は,表2-14のとおりです。
(3) 休猟区の設定状況
狩猟鳥獣が減少した地区で,3年間休猟することにより狩猟鳥獣の自然増加を図る目的で,県下の可猟面積の9分の1程度を毎年休猟区に設定しています。
平成11年3月31日現在で69カ所,100,277haの休猟区が設定されています。(森林保全課調べ)
(4) 銃猟禁止区域の設定状況
銃猟による危険を防止するため,事故頻発地域,学校所在地,農林業上の利用が恒久的に行われることにより人の所在する可能性が高い場所,レクレーション等の目的のために入林者が多いと認められる場所,その他事故発生のおそれのある区域を,積極的に銃猟禁止区域に設定しています。
平成11年3月31日現在で78カ所35,577ha銃猟禁止区域が設定されています。(森林保全課調べ)
(5) 野生鳥獣の保護・管理
〔1〕 保護施設
新設・既設の鳥獣保護区について,その境界を明らかにするため,表2-15のとおり必要な標識を設置しています。
〔2〕 鳥獣飼養の許可
狩猟鳥獣以外の野生鳥獣を飼養する場合は,市町村長の許可が必要です。
過去5年間における飼養許可件数は,表2-16のとおりです。
平成10年度における飼養許可件数(更新を含む)は,鳥類がメジロ1,149羽,ホオジロ571羽,ウグイス118羽,その他34羽,獣類ではサル10頭となっています。
〔3〕 生息状況調査
(ア) キジ・ヤマドリの出会数調査
キジ・ヤマドリの出会数調査は,昭和43年から全国一斉に毎年実施しています。
本県も全鳥獣保護員を動員し,狩猟解禁の初猟日において,出猟者が確認したキジ・ヤマドリの出会数を聞き取り調査していますが,最近におけるその調査結果は,表2-17のとおりです。
(イ) ガン・カモ科鳥類生息調査
ガン・カモ科鳥類生息調査は,昭和44年度から毎年1月15日前後に全国一斉に実施しています。
本県も職員及び全鳥獣保護員を動員して実施しており,最近の調査結果は,表2-18のとおりです。
〔4〕 傷病鳥獣の保護
社団法人鹿児島県獣医師会に委託して,保護措置を講じました。
平成10年度に保護した鳥獣は,表2-19のとおりです。
〔5〕 有害鳥獣の駆除
鳥獣保護事業の推進により野生鳥獣の保護繁殖が図られていますが,野生鳥獣は,その習性上農林水産物を食害すること等により,被害を及ぼすこともあるので,農林水産業の振興を図るために,有害鳥獣の駆除を実施して,被害を最小限にとどめるよう努力しています。
有害鳥獣として駆除した鳥獣は,表2-20のとおりです
(2) ウミガメの上陸状況
ウミガメの上陸状況は,表2-21のとおりです。
3 ツル保護
出水地域には毎年,約1万羽のツル(ナベツルとマナヅル)が飛来しますが,そのほとんどが荒崎地区に集中して生息しているため,伝染病によるツルの絶滅が危惧される一方,地区外にも多数飛来して農作物への被害等の問題が生じています。
このため,国設鳥獣保護区の特別保護地区に指定されている東干拓地区において,生息環境の改善・整備等を行い,ツルの集中化の改善と農作物被害の軽減を図るための「特定地域鳥獣保護管理事業」を平成8年度から開始しました。
平成9年度の事業内容は次のとおりです。
(1) 農地の借上げ
ツルの渡来期間中,東干拓地区の海側の農地を休遊地として借上げ,ツルのため良好な生息地として確保しました。(約53ヘクタール)
(2) ネグラの整備
借り上げた農地の中に,ネグラを1箇所設置しました(約1ヘクタール)。
(3) 防護網設置
ツルが東干拓に移動することにより,農作物への被害が増大することが考えられたため,被害軽減のための防護網を設置しました。
(4) 給餌事業
休遊地において,広く粗く給餌を実施しました。
(5) 環境等調査
羽数調査,分散状況等効果調査,防護網効果調査を実施しました。
4 マングース対策
奄美大島は,島しょという地域的特性をもち,アマミノクロウサギやアマミヤマシギ等多くの野生生物の固有種・希少種が生息し,特有の生物相を有しています。
その中で,移入種であるマングースが1979年頃から名瀬市を中心に定着し,生息数の増加・生息域の拡大等により,固有種等を含む生物相に悪影響を与えているのではないかと懸念されています。
このままマングースの分布域が拡大すれば,希少種をはじめとする奄美大島特有の生物相に壊滅的な打撃を与える恐れがあることから,早急にマングースの駆除・制御の方策を確立することが必要になってきています。
このため「島しょ地域の移入種駆除・制御モデル事業」としてマングース対策事業を平成8年度から実施しています。平成10年度事業結果は次のとおりです。
(1) 効果的捕獲技術の開発及び捕獲の実施
マングース捕獲用トラップの材質,構造,設置方法など,安価で人手のかからない捕獲技術を実際に捕獲調査を実施しながら検討しました。
(2) 生息個体数,分布構造の把握
広域にわたり一定の方法で捕獲を行い,マングースの分布範囲,生息密度分布,個体数等の把握のための調査を行いました。
(3) 生息環境調査
マングースの分布と環境要因との関連性を調べるとともに,捕獲データと捕獲用トラップの設置環境との関連性から,環境選好性を調べました。
(4) 捕獲個体の分析
捕獲した個体について,外部形態の計測,繁殖状況のチェックを行うとともに,希少種の捕食状況を明らかにするために,胃内容物を調査しました。
また,専門家に,導入されたマングースの種の同定調査を依頼しました。
(5) テレメーターを用いた行動調査
性,年齢等異なるマングースにテレメーターを装着し,行動域の広さや内容,社会構造,環境利用状況等を調査しました。
(6) マングース放獣の経緯及び他の動物に対する影響
文献によるマングース放獣の歴史,また,ハブの咬傷記録から,マングース放獣とハブ生息等の影響調査を行いました。
5 野生生物保護思想の普及啓発
(1) 愛鳥週間における啓発活動の推進
鳥獣保護の実効を期するためには,鳥獣に親しみ,その習性を知り,これを保護しようとする思想を広く県民に普及することが大切です。
また,幼少期における教育課程での愛鳥思想の養成は重要です。
このため,県下の小・中・高校生から「野生鳥獣保護」をテーマにしたポスター及び巣箱を募集し,優秀作品を愛鳥週間(5月10日から5月16日まで)中に表彰するとともに,入賞作品を仙巌園及び鹿児島市平川動物公園に5月31日まで展示し,県民への普及啓発を図りました。
平成10年度の応募者は表2-22のとおりです。
また,野生鳥獣の保護思想を普及・高揚させることを目的として,愛鳥モデル校を指定しました。
(指定期間3カ年)
(2) ウミガメ保護啓発活動
ポスター(2,000部),小冊子(3,000部),テレビ等を利用した広報,パトロール開始式でのアピール,立看板設置(6基),市町村広報誌等による周知徹底を図りました。
6 奄美群島生物多様性の保全
奄美地域は,種の保存法の「国内希少野生動植物種」に指定されているルリカケス,オオトラツグミなどの鳥類や,特別天然記念物に指定されているアマミノクロウサギなど希少な野生生物が生息しているほか,世界中で奄美にしか生息しない固有種が多く生息している世界的にも重要な地域です。
現在,「人間活動と野生生物との共存の確保」は,どの地域でも大きな課題となっていますが,固有種・希少種が多く,多様な生物相を有する奄美群島では特に重要になっています。
このような状況に対応するため,奄美に生息する野生生物の調査研究や,野生生物保護思想の普及啓発等を総合的に推進する拠点施設として,奄美野生生物保護センターの整備が平成9年度から開始されました(11年度竣工予定)。
また,平成8年度に策定した「人と野生鳥獣との共生の確保及び生物多様性の保全」を基本理念とした第8次鳥獣保護事業計画に基づき,平成9年11月に名瀬市の金作原地区,平成10年11月に住用村の金川岳地区を県の鳥獣保護区に設定しました。
7 野生生物の生息・生育環境の確保
(1) 多自然型川づくり
平成9年12月の河川法の改正に伴い,新たに「河川環境の整備と保全」「地域の意見を反映した河川整備の計画制度の導入」が盛り込まれたのを受けて,本県においても「ふるさとの川モデル事業」「地方特定河川環境整備事業」「リバーフロント整備事業」等の事業を今後も積極的に進めることとしています。(平成10年度に実施した施工例は,資料編10−(5)河川の環境整備参照。)
一方,河川計画の策定にあたっても,動植物の生息に必要な当該河川の維持流量を確保するなど生物の生息・生育環境の保全に努めています。