第1節 地球環境問題の概要
地球環境問題とは,地球的な規模で影響を及ぼす環境問題で,地球温暖化,オゾン層の破壊,酸性雨などがあげられますが,先進国を中心とする 社会経済活動の一層の拡大,高度化に加え,開発途上国を中心とした人口増加等が大きな原因となっています。
また,現象の規模が極めて広範囲でその構造が複雑であり,特定の要因を規制するといった手法だけでは解決しにくく,さらに,現在の事業活動や 利便性を求め続ける私たちの日常生活との関連が深いため,実効性のある取組を困難にしており,これまでの経済社会システムや生活様式を見直す必要があります。
一般的に地球環境問題は,次の9事象に分類されています。
1 地球温暖化
大気中の二酸化炭素,メタン,亜酸化窒素等の温室効果ガス濃度の増加により,このままでは,2100年には地球の平均気温が2℃上昇すると予測されています。
地球の温暖化が進むと,南極などの氷が溶けることによる海面の上昇のほか,気候の急激な変動による食糧生産や植生への影響などが懸念されています。
2 オゾン層の破壊
地上10〜50kmぐらいのところにあるオゾン層は,有害な紫外線を吸収し,地上の生物を守る役割を果たしています。
近年,電子部品の洗浄剤やエアコンの冷媒などに広く利用されているフロン等が機器の廃棄時等に大気中へ放出されることにより,太陽から放射される有害な紫外線を吸収する成層圏のオゾン層を破壊しており,生態系への影響が懸念されています。
3 酸性雨
石炭や石油などの化石燃料の燃焼に伴って排出される硫黄酸化物や窒素酸化物などの大気汚染物質が大気中で硫酸や硝酸に変化し,雨等に溶けて地上に降下する現象で,自動車の排出ガスや工場のばい煙等が主な原因となっています。
欧米では,広域において農作物や樹木などに影響を及ぼしたり,湖沼の水が酸性化して,魚類に影響を与えています。
4 海洋汚染
海洋は,河川等からの有機物や有害物質の流入,船舶等からの油の流出など様々な原因により汚染が進行しており,地域によっては自然公園など景勝地海岸 の汚染や赤潮の発生,水鳥や海洋生物への悪影響などが生じる場合もあります。
また,油や廃棄物の海洋投棄などにより,海洋の汚染が全世界的に進行しています。
5 有害廃棄物の越境移動
廃棄物は,従来は発生した場所の近くで埋め立てなどの方法で処理されてきましたが,処分経費の高い国から安い国へ,また規制に厳しい国から緩やかな国へと,適正に処理する能力を持たない国へ移動される可能性があり,その国の環境に重大な影響を与えることが懸念されます。
6 森林(熱帯林)の減少
熱帯林は,地球温暖化の原因である二酸化炭素の吸収源として重要であるとともに,地球上の約半分の種類の生物が生息する遺伝資源の宝庫です。
近年,焼畑移動耕作,農地への転用,商業用材の伐採などにより,世界の森林面積の半分を占める熱帯林が急速に減少しています。
熱帯林が減少することにより,気候の安定化,野生生物の種の維持,土壌や水の保全等に様々な悪影響が出ることが懸念されています。
7 野生生物の種の減少
干潟,サンゴ礁,マングローブ林などは,熱帯林と同様に野生生物の種が豊富な場所です。
このような場所の破壊や貴重な野生生物の乱獲などにより,野生生物の種の絶滅など生物多様性の減少が問題となっています
8 砂漠化
アフリカの低緯度地帯や中央アジアなどでは,無理な放牧や耕作,薪炭材の採取などの人為的要因などから砂漠化が進行し,周辺住民の生活が脅かされるだけでなく,気候変動をもたらし,食糧生産に悪影響を及ぼすと考えられています。
全世界で毎年,九州と四国の面積に相当する土地の砂漠化が進行しているといわれています。
9 開発途上国の公害問題
開発途上国においては,人口の増加や集中,都市化に対し,下水道や廃棄物処理など基盤整備不足による水質汚濁や自動車の増加等による大気汚染などに加えて,急速な工業化に公害防止対策が追いつかず,環境問題が深刻化しています。
第2節 地球環境保全行動計画の推進
資源やエネルギーを大量に消費する近年の社会経済活動によって,私たちの生活は便利で豊かになってきました。その一方で,石油などの化石燃料から発生する二酸化炭素などが急激に増えておりその結果,地球温暖化やオゾン層の破壊,酸性雨など人類や生態系全体に影響を及ぼす地球規模の環境問題が懸念されています。これらの地球環境問題は,私たち一人ひとりが日常生活や事業活動を,身近なところから見直すことによって,解決の一助となることができる問題だといわれています。
そのため,県では,平成10年3月に策定した「鹿児島県環境基本計画」に基づき,環境保全に向けた取組を実践している事業者団体や民間団体,学識経験者等で構成する検討委員会を設置し,意見をいただきながら,「鹿児島県環境保全行動計画」を平成11年3月に策定しました。
この計画では,本県でも二酸化炭素の排出量が増加していることから,地球温暖化防止を中心テーマにしていますが,本県の豊かな水環境や自然環境の保全についても取り上げながら,地球環境問題の解決に向け,私たちが,日常生活や事業活動の中で,すぐにでも取り組むことのできる具体的な行動を提案しています。
今後この計画を推進するため,環境保全に主体的に取り組む事業者団体や民間団体などで構成する推進組織を整備し,県民や事業者,行政が一体となった取組を推進することとしています。
図4−1 県地球環境保全行動計画(地球環境保全のための具体的行動)
図4−1 1 環境に配慮した生活様式づくり
図4−1 2 環境と調和した地域づくり
図4−1 3 循環を基調をした社会システムづくり
第3節 本県の取組状況
地球環境を保全することが,地球環境の保全につながることから,資源やエネルギーの消費抑制や循環的利用の徹底などにとり,環境への負荷低減を目指ます。
1 地球温暖化の防止
地球温暖化の最も大きな要因となる二酸化炭素は,主に化石燃料の燃焼や廃棄物の焼却に伴って排出されます。
そのため,県内では化石燃料エネルギーの代替エネルギーとして様々な新エネルギーの利用が進められています。
太陽エネルギーについては,太陽光発電システムや太陽熱利用の給湯システムが県下各地の住宅や民間事業所,公共施設で導入され,風力や地熱については,発電施設が設置されています。
一部の清掃工場では,ごみ発電による電力を場内で利用するとともに,電力会社にも売電したり,ごみ焼却余熱を暖房,給湯等に利用しています。
また,低公害車については,ハイブリッド自動車が民間を中心に普及しつつあり,屋久島では県や町が電気自動車を導入しました。
2 オゾン層の保護
県では,関係業界と行政で構成する「県フロン対策推進協議会」を設置し,フロンの回収・破壊の促進や普及・啓発に努めており,既に多くの市町村や自動車業界,冷凍・空調業界などの各種団体がフロンの回収等に取り組んでいます。
平成10年度から「県フロン対策推進協議会」では,県内を巡回して回収を行うフロン巡回回収システムを導入し,14市町で回収が行われました。
3 酸性雨対策
県では,酸性雨の実態を把握するため,昭和63年度から喜入町で,平成元年度から鹿児島市で自動測定機によるモニタリングを実施しています。
その調査結果によると,国の全国調査結果とほぼ同レベルの酸性雨が観測されていますが,現在のところ酸性雨による生態系等への影響は,現在のところ本県を含め我が国では顕在化していません。
酸性雨は,工場・事業場や自動車からの大気汚染物質が原因とされていますが,我が国では,東アジア諸国からの大気汚染物質の影響も考えられています。
4 海洋汚染防止
本県では,海岸線が長く国際航路とも接しているため,廃油ボールやごみの漂着が絶えず,原因者が不明のこともあり,処理対策に苦慮しています。
また,県では,公共水域の監視の一環として,鹿児島湾や本県の周辺海域等の水質調査を継続して実施しています。 その結果によると,環境基準の達成率は全国平均を上回っており,全般的には良好な状況にありますが,閉鎖的な内湾である鹿児島湾については,湾内水と外海水の交換が悪いことに加え,その流入域内に県の人口の約半数が集中していることや産業活動の拡大などにより,富栄養化が懸念されています。
そのため,県では,「鹿児島湾ブルー計画」を策定し,関係機関と連携しながら,生活排水対策や水産養殖業対策など総合的な水質保全対策を推進しています。
5生物多様性の減少
暖温帯から亜熱帯に至る南北600キロに及ぶ県土を有する本県には,固有種を含む多種多様な野生生物が生息しています。
県ではこれまで,ウミガメ保護条例を制定して県内の海岸で産卵するウミガメの保護に努めるとともに,出水地方に渡来するツルの保護対策にも取り組んでいます。
特に,奄美に生息する野生生物の調査研究や,野生生物保護思想の普及啓発等を総合的に推進する拠点施設として,奄美野生生物保護生物保護センターを整備しています。
また,世界自然遺産に登録された屋久島では,自然との共生を目指す屋久島環境文化村構想を推進しています。
6 その他の地球環境問題への対応
有害廃棄物の越境移動については,これまで,本県では有害廃棄物の輸出入が問題になったことはありません。
また,砂漠化防止については,本県の民間ボランティア団体が継続的に中国での植林活動を行っています。
第4節 率先実行計画の推進
県は,事業者・消費者としての側面を持ち,自らが地球温暖化防止など環境保全に向けた取組を推進することが必要であることから,平成10年12月に「県庁環境保全率先実行計画」を策定し,県の全ての部局・機関の事務・事業及び職員の活動を対象として,省エネルギーの推進やリサイクルの徹底など,環境への負荷の削減のための行動を率先して実行しています。
取組項目については,平成11年1月1日から平成15年までとし,進行管理は,「県環境基本計画推進本部・県庁環境保全率先実行計画推進部会」において行います。